読み終えました。
実は読み終えてから数日が経っているので、近頃にしてはいいペースで読めたのかなと思います。それでもこの厚さの小説を一日で読めないのだから、大学の頃とは読書のペースが比較にならないほど遅いですね。
まあ、それはさておき。
「メグレと若い女の死」、読み終えたときは受けた印象や読後感が宮部みゆきの「火車」と似ているなあと感じました。
若い二人の女性の人生が交錯する。
二人は現状に不満を抱えていて、それは解消する過程で一人が死に一人が残る。
探偵は「火車」では生き残った犯罪者の人生をトレースし、
「メグレと若い女の死」では死者の被害者の人生をトレースする。
いずれの物語でも探偵はトレースした人生の持ち主である女性にシンパシーを感じる。
「火車」は巻末の文章の余韻が最高に好きで、いままでに何度も読み返しているおっさんにとっては本当に震えた一冊。
P.582
こっちから何を尋ねるかなどは問題じゃない。俺は、君に会ったら、君の話を聞きたいと思っていたのだった。
これまで誰も聞いてくれなかった話を。君がひとりで背負ってきた話を。逃げ惑ってきた月日に。隠れ暮らした月日に。君がひそかに積み上げてきた話を。
時間なら、充分ある。
いま持っている「火車」は一度手放して古本で買い直した物なんですが、奥付に記している読了日だけで5つあるので、最低五回は読んでいることになります(実際は読了日を記入する習慣はもう止めてしまっているので、もっと読んでいることでしょう)。
親の残した借金で人生がゆがんでしまうところが「火車」の主人公とおっさんは似ているので、おっさんが過剰なシンパシーを抱いているということを除いても、「火車」は最高におもしろいミステリーだと思います。
それと似ているなと感じたのだから、「メグレと若い女の死」もかなり好印象です。
P.239~240
彼女はひとり、悪意に満ちた世界の中で見がまえていた。どんなゲームの規則があるのか、理解しようとしても叶わなかった。(略)
わたしのどこが、そんなに変わっているというの?なぜわたしの身に、あらゆる厄介事が降りかかってくるの?
彼女の死すら、まるで運命の皮肉だった。
巻末に近い、このあたりは読んでいてジンと来ました。
「メグレ」シリーズ、初読で好印象なので、もしかしたらシリーズの他の作品も読んでしまうかもです。
というか、パトリス・ルコントの映画「メグレと若い女の死」はぜひとも見ていたいなあ。オリジナルの若い女性の登場人物が一人増えているらしいので、全く違う物語になっているんでしょうけれども。