「まなさんと一緒」の日々

一緒に暮らしている、猫のまなさんとの日常を記していきたいと思います。

『孤独な夜のココア』

映画『ジョゼと虎と魚たち』を観て、読むようになった田辺聖子さんの作品。

 

ジョゼと虎と魚たち(通常版) [DVD]

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といっても、田辺さんの作品、読んだのはこれが二冊目で、

よく読んでいるというにはほど遠い。

 

 

そもそも、僕の読書においては、 「映画」に関係するものは、

結構重要な転機を占めるものが多い。

 

 

最初に大人向けの本、 こう書くとイヤラシイ本に聞こえるけど、

こども文庫とかではなく、普通の文庫という意味、を初めて読んだのが、

アガサ・クリスティの「オリエント急行の殺人」。

 

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

  

 

これを読んだきっかけは、子供向けの「ABC殺人事件」を読んで、

アガサ・クリスティに興味を持っていたところ、

 

 

ABC殺人事件 (講談社青い鳥文庫)

ABC殺人事件 (講談社青い鳥文庫)

 

 

 

オリエント急行殺人事件」がTVの日曜洋画劇場で放送されたのに、

起きていられずに眠ってしまったために、

駅前の本屋で、「オリエント急行の殺人」を買ってきたことにある。

 

 

SFを読みはじめたのも、TVで「ブレードランナー」の酸性雨の降る暗い未来像にびっくりして印象に残っていたのを、 原作があることを知ってF.K.ディックの「アンドロイドは電気羊の夢をみるか」を読んだから。

 

 

ブレードランナー クロニクル [DVD]

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アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

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吉田秋生の漫画を読むようになったのは、

テレビの深夜映画で「桜の園」(リメイクではなく最初の方)を観て、

文庫版の漫画「桜の園」を買ったからというように、

並べてみると、影響されやすい性格であることがよくわかる。

 

櫻の園【HDリマスター版】 [DVD]

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櫻の園 白泉社文庫

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で、『ジョゼと虎と魚たち』は映画館で観て、 ものすごく感動した映画のひとつで、

原作の文庫、サントラCD、パンフレット、DVDと揃いで持っている。

 

 

おまけにサントラを担当していた「くるり」というバンドにハマり、

大げさにいえば人生を左右されているともいえる感じだ。

 

 

ジョゼと虎と魚たち』の原作と同じように、

こちらの『孤独な夜のココア』も短編集になっている。

 

 

短編の名前と、終わりの文章を引用すると、

 

『春つげ鳥』

「もしかしたら笹原サンは、わたしに、あの春つげ鳥を見せるために、わたしにめぐりあったのではないかと思われる。でも、笹原サンをこいしいと思うより春つげ鳥がなつかしいというのは、本末転倒かしら。」

 

 

『雨の降ってた残業の夜』

「恋というものは、生まれる前がいちばんすばらしいのかもしれない。」

 

 

『エイプリルフール』

「でもいまはもう、翌朝の午前一時、キヨちゃんのやさしさはうそではないかもしれない。」

 

 

『石のアイツ』

「世俗の風が舞いこんだとき、その幸福は石になったのだ。五年たってやっとわかった。」

 

 

『怒りんぼ』

「カッとなって怒れた日は、悲しみを知らない日だったのだ。」

 

 

 

こうして列挙しても、なんのことやら伝わらないと思うが、

この本を読んでみると、うまいなと思わされること必定。

 

 

いずれの短編も京阪神を舞台にした、男女の物語なのだが、

いま流行りの甘ったるい純愛の小説群よりも、

ドライで軽妙で、僕にはずっと好ましく感じられる。

著者が年齢を重ねているからだろうか(女性に対して失礼かもしれないですね)。

 

 

書かれたのは1970年代だと思うのだが、古いという感じはしない。

携帯電話やパソコンが生活の様式を大きく変化させても、

男女の関係や人間の感情はそれほど変化しないということだろう。

 

 

もちろん、それを描き出す著者の筆が優れているのは言うまでもないことだ。

Mixiのレビューに加筆しました)

 

 

孤独な夜のココア (新潮文庫)

孤独な夜のココア (新潮文庫)

 

 

 

2017年6月9日:改行修正、カテゴリー追加